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interviewインタビュー

鳥居 勝幸 先生

2022.11.09

【新任管理職】第三回 メンバーの成長を支援する

「新任管理職研修」について、5回シリーズの特別インタビューとして鳥居先生にお話をお伺いしました。今回は、第三回研修である「メンバーの成長を支援する」について伺ったインタビューをお届けします。

鳥居勝幸 サイコム・ブレインズ 管理職

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アビリティーセンター 以下アビ今回は、管理職研修の基本プログラム全4回の、第三回「メンバーの成長を支援する」についてお話をお伺いできたらと思います。

鳥居先生 以下敬称略最近、あまり「人材育成」と言わないようにしているんですね。

「育成する」ではなくて「成長を支援する」という言い方になるべく変えようとしています。メンバーが主人公であって、そのメンバーに主体的に考えて欲しいためです。

アビ育成ではなく、支援なんですね。

鳥居そして、管理職としての大前提では、ダイバーシティが分かっているかどうかがありますよね。

兎角、画一的な文化で育った方が多いので、様々な経験や価値観があり、様々な生活をしたいという人たちに中々向き合えないという現状はあると思うんですね。

これまでは、会社ありきで、人はその次でしたよね。これを逆にしなければならない。個の尊重ありきで、その次に会社、という考え方か、両方とも大事だという考え方ですよね。

部下ってなんだろう?と聞いたときに、「部下は、目標を与えてやってくれる人であり、ちゃんとやってくれた人は高い評価をあげて、ボーナスも高くなる人」、つまり組織の目標達成をするための、一つの持ち駒みたいなもの、という考え方があります。

もう一つの考え方は、「部下はそれぞれの人生を持った、キャリアプランを形成している一個人である。一個人なので、その一個人を理解して、その人が成長するように上司は支援しないといけない。その人が成長するように支援すると、モチベーションも上げてくれるし、パフォーマンスも上げてくれて、そうすると組織の目標達成も出来る」という考え方です。

二種類ありますよね。前者が昔、今までの考え方。後者がこれから求められる考え方ですね。

前者では、上司と部下は上下関係なんですね。後者では、上司と部下は対等なんです。人間と人間ですから。まずこの立ち位置を受け入れるのが難しい方もいると思いますが、組織ありきで個人がそれに従う、というところを変えたいなと思っています。

アビ本当に大きな違いですね。正にここが今一番変わっているところだと感じます。

鳥居そうなると、ハラスメントも減ってくるはずなんですね。セクハラやパワハラは、上司が自分が偉いと思っているから起こることなので、減るはずです。

また、コンプライアンスについても、なぜ部下がコンプライアンスを違反するのかを考えると、何か間違いや問題を起こした時に、上司に言いにくいからなんですね。でも、心理的安全性が高い状態にしてあげれば無くなっていくと思います。

上下関係、人間関係の強弱、は色濃く存在しているんですよね。日本語の上司・部下という言葉も本当は良くなくて、外資系ではマネージャーとメンバーと言いますよね。

上司とは何か、部下とは何か、という立ち位置を変えないといけないということですね。研修ではこのことを言って終わりにしたくなくて、感じ取って欲しいところであり、研修の大きな命題です。

成長支援で、本当に行きつくところは、自律的に部下がキャリアを考えられるような人になって欲しいというところです。

基本的にはそうでないと、本当のモチベーションは湧かないし、新しいことに挑戦しようという気持ちや、勉強しようという気持ちが湧かないですよね。これが部下の成長支援の一つのゴールだと思います。

アビ4回の研修ですが、この回が一番受講される方で受け入れが難しく感じられる方もいらっしゃるのではないかと思います。私自身もそうですが、自分が受けてきた指導や働き方と変わっていますよね。

鳥居身近なテーマであり、尚且つ奥が深いですよね。

少し大きな話で言うと、日本は先進国の中でエンゲージメント(engagement)が低いですよね。自分の組織・会社に対する愛着心が低くて、仕事に対する意欲も低く、進んで転職しようという人も少ない。これは何故だというと考えると、やはりキャリアを自分で考えないことに原因があるんだろうと私は思います。その背景には、年功序列と終身雇用がありましたが、やはり変わる時に来ていますよね。

※英語で「婚姻」「誓約」等の意味。ビジネスにおいては、「職場と従業員との関係性」を表す際に用いられる。エンゲージメントが高い=従業員が会社に対しての愛着や貢献の意思が高い場合を指すことが多い。

(受け入れるのが)難しい部分もあるかと思いますが、数年経てば変わっていると思います。そうでないと、優秀な人は辞めていきますし、人も入ってこないですからね。

アビ研修ではすぐに理解される方が多いですか。

鳥居いきなり、そうしなさいと言っても伝わらないので、ディスカッションから入っていきます。思想的なことではなくて、「部下育成に対して感じている問題は何ですか」といった身近なテーマでのディスカッションから入っていくことが多いです。

そうすると、「モチベーションが低い人がいて困る」「何度もミスを繰り返す人がいる」「部下の面倒をみる時間がない」「仕事を任せたいが、任せることができない」という悩みが沢山出ます。じゃあそれをどう解決しないといけないか、ということを研修中にやり取りするんですね。

そうすると、「部下に合った導き方をしなければならない」という結論が出ますよね。AさんにはAさんの導き方があり、BさんにはBさんの導き方がある。それを一人一人考えてあげるのが上司です。

そのためには、一人一人の考えを聞いて、理解しなければならないですよね。その辺りからコーチング型の会話の必要性に結び付けていくんです。

アビ一人一人を理解するためにコーチングの考え方を使うんですね。

鳥居コーチング型の面談をするにはスキルが必要です。傾聴、質問、深堀をすること、ロジカルに導いていくこと、メモの仕方、様々なスキルがあるのでそれを伝えて、ロールプレイでトレーニングします。

1on1を行っている会社は多いと思いますが、上司ばかり話している1on1が多いんですね。部下の話を聞く1on1はやったことないという方は多いですね

アビコーチング型の面談において、マインドとしてはどういったことが大切でしょうか。

鳥居人は皆それぞれ、ということだと思います。画一的にでは上手くいかないでしょうね。

ここは、コーチング型の面談を実践してもらう中で感じ取ってもらう、気付いてもらうしかないと思いますね。(受講者から)「やってみて部下の考えが違うことに気付きました」と伺います。

コーチングに必要なスキルも、研修だけで出来るようになるものではないので、研修の役割はやはり、実行してもらうことなんですね。アクションプランを書いてもらって、実行まで持っていきます。

アビありがとうございます。

上司と部下は対等であり、部下の方にモチベーションを上げて働いてもらうために、相手を理解することが大切なのだと思いました。

次回は最終回です。研修第四回の「行動と内省により殻を破る」についてお伺いします。