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酒井先生に聞くクレーム応対の極意「クレームはお客様の愛。お客様に先入観を持たずお話を聞くのが愛情表現」

2022/07/29(金)


酒井 もえ 先生

本日は、大手通信会社、メーカーのカスタマーサポートで、10年以上勤務し数千件以上のクレームを解決されてきた「クレーム応対のスペシャリスト」である酒井先生にお客様応対の極意を伺いました。

営業職からの転属で始まった電話応対

アビリティー以下アビ酒井先生、本日はよろしくお願いいたします。

酒井先生 以下敬称略よろしくお願いいたします。

アビまずはご経歴からお伺いできますか。

酒井初めに大手通信会社に営業職で入社しました。20数年前、インターネットがまだ普及していない時で、与えられたリストを持ってお邪魔をして、「インターネットに興味はございませんか?これからの時代普及していきますよ」と説明をするのが仕事でした。

中々受け入れられない時代で苦戦しましたが、1年程経ったら急に爆発的にインターネットが普及し始め、コールセンターに転属をしました。それが、電話応対の始まりです。

アビ電話応対をされたのは、初めは会社でのご異動だったんですね。

酒井ちょっと研修を受けて「電話受けて下さい」というものではなく、まずは半年程かけて、答えなければならない販売事例を覚えなければならないんですね。そこからやっと、声を出すということを徐々に行っていって、オペレーターになりました。

オペレーターはやってみるとすごく面白くて、それまでは暑い夏でも営業で外に出ていたのが、コールセンターで何百人も人がいる中でずっと座っているんですね。

例えば困ったことがあれば手を挙げればリーダーが来てくれるし、文房具も手を挙げれば文房具係の人が持ってきてくれるんです。

アビすごいですね(笑)。

酒井カルチャーショックですよね(笑)。

個人情報の取り扱いが厳しいので、私物は全て持ち込めなくて、ペン1本でも会社のものを使わなければなりませんでした。ここまで厳しかったのはこの会社だけだったなと思います。情報漏洩でどれだけ損害が出るか、という意識は徹底していました。

アビ大変なことはありましたか。

酒井電話一本一本の応対というよりも、自分の未熟さと言いますか、感情のコントロールがあまり上手に出来なかったなと今となっては思います。

お客様の電話に一喜一憂していました。自分に言われるけど、自分が原因ではない訳ですよね。お客様が怒っている内容は私が原因ではないんですが、感情でぶつけてくるお客様がいらっしゃると、感情的になってしまっていました。

アビ酒井先生でもそんな時があったとは驚きです。

酒井でも周りの同年代の方は同じような方が多くて、仲間意識が強かったですね。グループがあるので、「あのグループよりも売上を出そう」と頑張っていました。

アビ電話応対の内容はどういったものですか。

酒井契約者様からで、本当に多岐に渡っていて、黒電話からインターネットまで、ご高齢の方から若い方まで、応対していました。

ここで学んだことは、多分野に渡ることの説明の仕方、苦情、セキュリティの重要さでした。個人情報漏洩の問題については、まだ騒がれていない頃に分かりましたね。

お客様からの高い要望を受け止める

酒井コールセンターは年程勤め、子育てとの両立が難しくなったことで悩んでいたところ、好条件の会社を紹介され転職しました。

その後、責任の重い仕事を任せてもらえまして、それがカスタマーの仕事で、ほとんどがクレーム応対です。法人以外のお客様はコールセンターがあってコールセンターが応対するのですが、対応しきれない場合に全部私に回ってくるという担当でした。二次対応と言うものです。

アビそれは大変ですね。お電話の内容としてはどういったことがあるんでしょうか。

酒井商品の不具合や、出来ない要望ですね。

例えば商品を買って、「これいいわ。でも、自分だったらこうする」という、機能やデザインについて情熱が強いお客様からの要望です。知識の多い方からのもっと高い要望を承ったり、販売店で受けた悪い印象であったり、多岐にわたる要望でした。

アビ出来ない要望、ある意味、商品を愛していると言いますか、愛情の裏返しのように感じますね。

酒井愛しているからこそなんです。

アビ応対が大変だったお客様はどういった方がいらっしゃいましたか。

酒井怒鳴ったり、「今すぐ北海道まで来い」「今から行くぞ」という脅しだったり、恫喝みたいなものももちろんありましたけれど、特に困ったお客様は・・

アビ待ってください、それはまだ軽い方なんですか?

酒井そうですね、そういう方は言っている間にクールダウンしていくんです。一時はどきどきしますが、出来ることは出来る、出来ないことは出来ないということをお話していると、「もういい」と落ち着かれます。

特に困ったお客様ですが、要望、愛情が強いお客様は、とにかく時間がかかるんです。話を聞く係ではあるんですが、お手洗いも食事もいけず3-4時間お話を聞くんですね。

ある方ですが、「私のデザインを取り入れて欲しい。今フランスでは何が流行っているかあなた知らないの」「あなたのところの商品は、私に言わせればトレンドではない。私の言うデザインを取り入れてはどう、アイディアをお貸しするわよ」と言ったように、感じとしては品の良いご婦人なのですが、電話を切っても切っても、「酒井さんいる?」とお電話が何日もかかってくる。

「ぜひ商品企画の者に伝えておきます」と言うと、2日位すると「伝えてくれた?どうなった?」と電話がかかってくるんです。

お客様が皆、同じじゃないなというのは、色んな経験から学びました。

アビ商品を良くしようというお電話があるとは思いませんでした。てっきり、大変だったクレームは怒鳴られる方とか怖いケースかと思っていました。

酒井怒鳴られる方もいらっしゃいましたが、人間の怒りってさほど持続しないのかなと思います。

お客様の気持ちに寄り添える応対が出来ないと、二次クレームになってしまう

酒井直近で一番大変だった方ですと、3-4時間怒り続けたお客様がいらっしゃいましたね。コールセンターの後、また転機が訪れアナウンサーになったのですが、その傍ら未練があってカスタマーの外注オペレーターをすることにしました。

その時の話ですが、お話を伺っていると、実は相手は同業者の管理職の方だったんです。「一番最初に出た人が、鼻で笑うような応対をした。許せないから、そいつを出せ」とおっしゃるんです。

アビ怖いですね・・!

酒井とても怖かったです。初めに電話を出たのは若い女性だったのですが、私の任務はその人の上司という設定でした。お相手は分かっていませんが、実は同業同士の話し合いだったんですね。

「社長を出せ、どういう社員を雇っているか、社長を説教してやる」とおっしゃるのですが、会社としては、社長は絶対に出せません。

「私としては御社の対応がどうしても納得がいかない。御社の社長のコラムを読みました、こういった思いを持っているのに、このような社員がいることに関して社長の見解を聞きたい」と、怒鳴ったりではなく、冷たく論理的な攻め方でしたね。

私は「社長は只今出張中でございまして、私が代わって全て○○様からお伺いした内容は記録して社長にも申し伝えますし、各担当者にも周知を徹底いたします」とずっとお話しをしましたが、最終的には「(最初に電話に出た)そいつを出せ」とおっしゃる。

「しかるべき教育は行っておりますが、ただ業務上お恥ずかしいながら電話に未熟な者が電話に出ることもございます。でもそれは○○様もご理解いただけるところではないでしょうか」と返してみると「それはそうだけど」と返って来て、探り合いですね。

夜の10時頃まで話したんですが、最終的には「もういいわ」とおっしゃいました。

アビ10時まで!大変ですね。

酒井録音が残っているので最初に出た人の応対を確認したのですが、鼻で笑うような印象は受けなかったんですね。言葉尻が少し気になるかな、くらいでした。ただ、人為的ミスを許せないお客様だったんですね。

不安を抱えてお電話をしてくるのがお客様窓口なんですね。そこでお客様の気持ちに寄り添える応対が出来なかったら二次クレームになってしまうというのは感じましたね。

最後には「もういいわ、僕も勉強になりました」と言って下さり、救われましたね。「明日会社に行ったら、こんな応対をしてくれたと酒井さんの話をしようと思います」とおっしゃっていただいて、「誰かの役に立てた」と、満足感のある終わり方が出来ました。

アビそこまで言っていただくのはすごいことだと思うのですが、なぜそうおっしゃっていただけたと思われますか。

酒井絶対に社長や他の人に変わらなかったからだと思います。ただそれだけなんですよ(笑)。なんとか納めないといけないな、という責任感もあったと思います。

共感したり歩み寄っては離れての3時間で、最終的には良い関係が気付けたという。

お客様の言葉を全てプラスに変える

アビ酒井先生が先程おっしゃっていた「お客様に寄り添う」というのが大事だったように思うのですが、いかがでしょうか。

酒井そうですね、例えば「お宅の商品高いよね」と言われたら、「当社の商品はこういったものを取り入れているので、自信を持った価格でお勧めしています」というように、正論を言うとお客様は怒るんですよね。

「私個人としては」というのはパワーワードだと思うのですが、「私個人としては○○様のようにこれだけの価格をお支払いいただくのは勇気がいることだと思います」というように、会社ではなく自分の意見として寄り添っていくしかないと思うんですね。

あとは、認めることですね。過去の購入履歴が分かるので、「これまでに〇個もご購入いただいたんですね、ありがとうございます」と言うと、「知ってくれている」「自分のことを良い客だと思ってくれている」と感じるので、心理的に働きかけるのは大きいと思います。

「購入したのを後悔している」「よその製品を買えば良かった」と言われると、つい「お役に立てず申し訳ございません」と言ってしまいそうになるんですが、「そのような選択肢もお持ちなのに、私どもの製品をご愛用いただいたことに感謝いたします」というように、プラスの言い方に変えますね

アビ謝るのではなく、感謝に変えるんですね。それは研修で受けたことか、もしくは酒井先生がご自身で行われていることですか。

酒井相手の方によって、正義感が強くてクレームされている場合もあれば、金銭要求の場合もあるので、その方に合わせた言い方があると思いますが、お詫びをお礼に変えるというのは、自分で編み出した手段だと思います。

アビなぜそこに辿り着けたんでしょうか。

酒井怒られすぎたんですよ(笑)。

丁寧な応対だけれど、どこかむっとする話し方の方っていらっしゃるんですね。初めの会社できれいな話し方は習ったので、周りの上手い人に引っ張られて声の出し方はどんどん上手くなったのですが、話力はケースバイケースで培っていかないといけないなと思いましたね。

正論で返すとか、ただ謝るだけじゃないなとちょっとずつ気付き始めて、第一段階は謝らなかったんですね、非を認めることになるので。すると「お前謝らないな」と怒られる。

そこで第二段階として、謝るようにしたら、「謝ったな、認めたな」となる。 次の段階で、怒った事実に関して謝るようにしたら、少し変化が見られた。 最終的には、お客様が発したプラスな言葉を返していくようにしました

アビ色々と試行錯誤されて、辿り着かれたんですね。

クレームは特別なお客様が申し出てくれる愛

酒井お客様って主張したいものなんですね。

たぶんクレームを言う人ってほぼいないんです。例えば何か買って食べて美味しくなくても、「美味しくないです」と会社に電話をして言わないですよね?

たぶん言う人は、直して欲しいという愛情深い人なんですね。クレームは愛に溢れているんです、クレーム=愛なんですよ

もっとあなたの会社のことを良くしてほしい、もっとあなたの会社のものを買いたい、という、愛でしかないんです。愛情深い、特別なお客様だけが申し出てくれる愛のムチですね。それを受けない手はないですよね。全部受け止めて会社に報告をしたら、もっと良い商品・サ-ビスが出来ると思いますし。

アビクレームは愛なんですね・・!

酒井あと私が個人的に行っていたのは、悪いことをおっしゃる方に、また後日電話をかけて、「○○様がおっしゃっていただいたことで、気付きがありました、ありがとうございました」と言うと、お客様は救われるんです。

クレームを言った人って気分悪いんですよ、いじめているような気持になって。それが「ありがとう」と言われると、救われるんですね。お客様からプレゼントをいただいたり、色々ありましたね。

アビすごいですね。

酒井元々は上司に粗品を送るように言われて、送るだけではと思って電話をしたところから始まったのですが、結果的に良い関係が築けて自分も相手も救われたんですね。

なので、熱の強いお客様にはした方が良いのかなと、アフターフォローをしていました。 最後は自分の中の良かった、悪かった、しかないので、お客様の想いに最後まで応えられた、という自分の満足だと思います。

本当は、クレームの数より、何百倍も喜びの数の方が多いと思うんです。何か食べて「美味しい」とは会社に言ってこないですよね。きっと、見えていないところに喜びが沢山あると思うのですが、そうでない想いは受け止めないといけないですよね。

アビ視野が広くていらっしゃいますね。

酒井メーカーの時は出荷数を見ていて、クレームの数も統計がでていたので、自然と視野が広くなったのかもしれないですね。

あと、思うんですよね、もしかしたら、もっと顕在的にクレームはあって、言わずに捨てた人もいるかもしれない、と。 だから、目に見えない部分に気付きを与えてくれるのが、クレームをおっしゃるお客様ですよね。

クレームに対して、「クレーム処理」とか絶対に言いたくないんです。自分がもしクレームを言った立場だったら「処理される」って言われたら嫌じゃないですか。

クレームは、私はこだわって「応対」と言っているんです。対人の受け答えであると思います。クレーマーも使いません。せっかく愛情がある言葉を言ってくれる人が「クレーマー」というようなネガティブな扱いをされるべきではないと思っています。必ず、「お客様」ですね。

アビ酒井先生がお客様に信頼される理由が分かってきたような気がします。

お客様に先入観を持たないことが、お客様への愛情表現

アビ最後に、お客様応対をされている方に、アドバイスをいただけますでしょうか。

酒井人として対等であること、人として考えを認めること、ですね。

ネガティブなことを言っても、プラスなことを言っても、プラスに捉えて、消化せずに言葉に出す。例えば「〇〇が嬉しいです」と言われたら、「私も自分のことのように嬉しいです」と言い、「あんまりだった」と言われたら、「新たな気付きであったので、貴重な意見としていただきます、ありがとうございます」と感謝で受け取る。 人って考え方が全部違うので、全部違う中で合わせるとしたら、「ありがとう」と言って嫌がる人っていないと思うんですよね。「ありがとう」で返すのは、全ての業種に使えるのではないでしょうか。

アビちなみに、先生はお客様に愛情がありますか?

酒井お客様に先入観を持たないことが、お客様への愛情表現かなと思います。

結婚式の司会もしていて、様々な年代の方と接するのですが、「この人こうなんだろうな」と決めつけて入ると、その方のことが引き出せないんですよね。年代も職業も考えも違うけれども、歩み寄るとどこか自分と共通点がある。そうすると、愛情が湧いてくるんですね。その人の考え方や言葉だけでは計れないところがあるなと。先入観を持たず、相手の話を聞いてみよう、と言う姿勢でいると、最終的に「良い人だったな」と愛情に変わっていくように思います。

アビ先入観を持たないことが、愛に繋がるんですね。本日は貴重なお話をどうも有難うございました。

酒井先生はクレーム応対という難しい場面をお客様の納得・救いに変えてきたお客様応対のプロフェッショナルです。

酒井先生の研修にご興味をお持ちいただきましたら、是非営業担当者、もしくはお問い合わせフォームからご連絡を頂けたら幸いです。