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interviewインタビュー

小島 俊一 先生

2024.06.10

小島先生「2028年街から書店が消える日」発売インタビュー

このほど、「2028年 街から書店が消える日」を上梓された、小島 俊一先生に企業研修グループ田中がインタビューします。

小島俊一 田中恵子 江渕泰子

小島 俊一 先生 プロフィール:

株式会社トーハンの営業部長、情報システム部長、執行役員九州支社長などを経て、経営不振に陥っていた愛媛県松山市の明屋書店に出向し代表取締役就任。それまで5期連続で赤字だった同社を独自の手法で従業員のモチベーションを大幅に向上させ、正社員を一人もリストラせずに2年半後には業績をV字回復させる。

現在は、中小企業向けコンサルティング、講演会講師、研修講師として活躍。

小島先生

聞き手|田中恵子(元高知放送アナウンサー、研修講師)

田中: 「会社を潰すな!」以来の2冊目の出版ですね。まず、この本を書こうと思ったきっかけを教えていただけますか?

小島:実は、全然違う本を書くつもりだったんですよ。「決算書の読み方」についての本を出したいと思って、企画書を5社くらいに送ったんだけど、すべて断られたんです。ある時、出版記念パーティーで出会ったプレジデント社の編集者に相談したら、「本屋に振り切った方がいいのでは?」とアドバイスをいただき、トライすることにしたんです。

田中: なるほど、小島先生の「決算書の読み方」は弊社でも人気の研修コンテンツなんですけどね!プロの編集者からすると、それよりも明屋書店の社長としての業績を活かした内容がいいということだったんですね。

小島:とはいえ、自分の知見だけじゃ足りない思い、取材をすることにしました。サブタイトルを「30人の識者からのメッセージ」としていますが、全国各地の出版関係者、書店経営者や書店員を訪ね、インタビューをし、本屋が消え続ける理由と、生き残る道に迫ったのが、この本です。

田中: 消えゆく書店については、最近メディアで扱われることも多いですね。私自身も、本屋さんがなくなったら嫌だなと思いながら、実際に本を買う時はポチっとしてしまいます。

小島:本屋で注文しても届くのが2週間後だと言われたら、そうなっちゃうよね。本屋のビジネスモデルは昭和なんです。本屋は雑誌とコミックで成り立っているので、輸送網も雑誌を中心にできている。そこに書籍をのせるから遅いんです。Amazonは明日来るんだから、読者満足で勝負にならないよね。

田中: 本の中では、そんな出版界の仕組みについても詳しく書かれていて興味深いです。

小島:本屋がなくなっていくという風景ではなく、実証的なものを書きたかったんですよ。本は、販売価格も仕入れ値も決まっているから、価格競争はないんです。だから読者は安心してどこででも買えるんだけど、粗利も決まっているから、そこから経費を出さないと赤字になる。今、人件費が上がり、光熱費が上がり、家賃が上がり、電子決済にもお金がかかるしで、粗利の範囲におさまらず赤字になる。構造的に問題があるんです。先ほど話したように、物流も昭和だから、昭和だったら儲かる仕組みなんだけど、変わらないからダメなんです。

田中: なぜ変わらないんでしょうか?

小島:イノベーションが起きないのは、教育が不在だからではないかと思い、アビリティーセンターの江渕さんにもインタビューをしました。

田中: そうなんですよね!企業研修エキスパートとして、弊社江渕が登場してビックリしました!書店が消える理由に、研修がからんでいるとは思いませんでしたが・・・

小島:実は、出版界には体系的な研修がないんです。そのことを江渕さんにお話したら、研修がないのは驚きだとおっしゃっていましたね。イノベーションを興そうとするならば、社員たちを刺激し、成長させなければならない、海外にも展開する製造業などは研修にとても熱心だと伺い、教育の不在が出版界の大きな課題だと確信しました。

田中: そうでしたか。研修、大事ですね!

田中: ところで、インタビューに登場する方は多岐に渡っていますが、これだけの方に取材をするのは大変だったんじゃないでしょうか。

小島:それはもう(笑)取材して文字起こしして、原稿を書いて、それを取材した人、編集者に見てもらって、また戻ってきて、と、一人で執筆するより何倍も大変でした。取材を断られることもあったし、取材をして原稿にしたものをお見せした段階で、掲載できないと言われたこともありましたよ。心が折れかけたこともあったけれども、やっぱり本屋さんが好きなんですよね。現状を知った上でなくなるのか、知らないままなくなるのかは何かが違う。実は、実際にインタビューを掲載しているのは28人、僕をいれて29人、30人目は読者の方なんです。色んな人が読んで、その感想の声が業界を変えるかもしれないと思っているんですよ。

田中: 小島先生ご自身には、書き終えて、本屋の明るい未来は見えてきましたか?

小島:本の中では、現状を憂うだけではなく、本屋が生き残るための提言も書きました。提言が何かしら実行されたら変わるかもしれません。本を書いたのは目的じゃなくて手段、目的は業界に変わってほしいんです。これからも話し続けて刺激したいですね。

田中: 本日はありがとうございました。

「2028年 街から書店が消える日」は発売後すぐ、重版がかかったそうです。ぜひ、本屋さんで探してみてください。