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interviewインタビュー

小笠原 豊道 先生

2022.10.05

小笠原先生に聞く 研修を組み立てる企業の担当者様へのアドバイス「現場の課題を掴んで、理想像に近づけていけるよう人材育成を設計するのが大切」

小笠原豊道 研修設計

今回は、長年企業様と研修を行われている小笠原先生に、研修を組み立てる企業の担当者様へのアドバイスをお伺いしました。

小笠原先生のご経歴等は、過去のインタビューをご覧下さい。

この記事のもくじ

課題を掴むのが始まり、研修は一つの手段として捉え設計していく

アビリティーセンター 以下アビ小笠原先生、本日はよろしくお願いいたします。

小笠原先生 以下敬称略よろしくお願いします

アビまずは、人材育成のご担当者様へ、「こういうことを考えた方が良い」ということがありましたら教えていただけますでしょうか。

小笠原まずは、研修は問題解決の手段だと捉え、解決したい問題は何かを押さえておくことがスタートです。例えば、人事制度に問題がある場合もありますし、キャリアルートが示せていない場合や、社内風土の問題という場合もあるので、本当に研修で問題解決することが適しているのか、を考えることが大事なポイントです。人材育成といえば、ついつい「とりあえず研修をやればいい」と考えがちなんですが、本当のソリューションは何かを考えるのが、一番初めにやるべきことですね。

アビ研修は一つの手段でしかないんですね。

小笠原「会社としてこのスキルが必要なので研修をしよう」となり、「研修に行ってこい」と言われても、やらされ感たっぷりになってしまい、育成が進まないんですね。

やはり個人のキャリアをどう設計しているのかに目を向けることが大事だと思います。会社が必要とするスキルと、個人のキャリアプランと、合わさったところで人材開発していくのが一番効果的です。

アビ人事担当の方は課題をどう掴んでいけばいいのでしょうか。

小笠原やはり現場と話をすることですね。「人材育成は、人材育成の部門がやること」と思われがちなのですが、本来は各部署で行うべきものです。現場と人材育成の担当が繋がっておくことはすごく大事ですよね。

各部門の管理職の方は、メンバーを観察したり、1on1ミーティングをしたりして、現場との対話をしながら、現場にどういった課題があるのかを察知し、それを人材育成に投げる。そして、どのように解決していけばいいのか、全社で行った方が良いのか、部署毎に行った方が良いのか、をディスカッションしていく。このような対応が会社にとっても、従業員にとっても一番良いと思います。

アビ企業様のお悩みは、どういったことが多いですか。

小笠原最近だとジェネレーションギャップの話は多いですね。また、技術継承が中々できないとか、人材不足による多忙や疲弊というのもあります。

人材育成は、以前はOJTOFF-JTSD3本柱と言われましたが、今は幅広い様々なアプローチがあるので、どういったソリューションが一番なのかを考えることが大切です。

最近ですと、ベンチマークのために他社に行って学ぶとか、交流ある会社にインターンシップ派遣して体験してもらう等もあり、人材育成=研修とは限りません。

アビ研修が効果的なのはどういったケースでしょうか。

小笠原ある程度の人数がいて、その複数人数を一定レベルに底上げしたい場合は集合研修が効率的です。その後は、個別対応が必要になるので、個別にコーチングをするなどOJTで指導していった方が実際の問題解決に繋がります。

皆集めてやるということは、効率が良くないので、参加者に、どうなって欲しいのかのイメージ出来ているのであれば、それを講師や企画をしている会社に伝え、一緒に設計することが必要だと思います。なので、これからは定型のパッケージ型研修では、効果を高めることが難しくなってくると思います。

アビ企業様に合せた研修の設計が必要なんですね。

人材育成は行動変容まで、アクションプランに落とし込むのが大切

アビ先生が企業の担当者様と、長年携わって研修を実施されている中で、良い研修を作る・研修を通して人材育成をする際のアドバイスがありましたら教えていただけますか。

小笠原私の専門分野なのですが、「インストラクショナルデザイン」の考え方を知っていると全然違います。インストラクショナルデザインが何なのかは知っておいて欲しいのと、あくまで「教育」という視点ではなく「学習の支援」という観点で育成に当たって欲しいと考えています。

インストラクショナルデザインの考え方で基本となるのは、「入口(現状)」と「出口(学習目標)」を明確に設定するところからスタートし、学習者の現状はどのような状態なのかを把握し、学習目標に到達するためには何ができるのか、どのような情報を伝えればいいのか、どのようなワークを体験してもらうのか、そして、どのように評価するのか、を考えて、コンテンツを作っていく。構造化して設計していくのがインストラクショナルデザインの一番のエッセンスになっています。

最近は講義だけの研修は減ってきましたが、講義は情報提示だけなので、それだけでは行動変容に繋がらないんですね。ロールプレイやディスカッションを行って、実際の職場で活かせるようにトレーニングする必要があります。

やはり学校教育のイメージがあるので、人材育成というのは先生がいて、先生に教わるのが育成なんだという概念が強い方がいらっしゃいますが、それはあまり参加者のためになる研修ではないんですよね。

研修の中にはアクションプランを組み込んで、追いかけていくことが必要で、出来れば研修の後にはフォローアップをするのが良いと思います。

行動変容を起こさないと意味がないので、その意味でフォローアップが大切になります。行動の変容が起これば組織の目標達成にも繋がります。人材育成には、研修、コーチング等様々あるので、そこから何を学んで行動変容するか、という設計が大事です。

アビ人材育成は、学ぶだけでなく、行動変容までなんですね。

今まで実施して良かったと思う心に残る研修はありますか。

小笠原ある企業で、中堅社員向けのアクションラーニング研修を行ったのですが、一回目のキックオフの研修では一般的な内容を共有し、二回目以降は、「良い会社」と言われている企業に訪問させていただいて学ぶ機会を持ちました。やはり様々な気付きがありましたね。

アビ訪問して話を聞くんですか。

小笠原話も聞きますが、現場を見せてもらいます。製造業であれば工場、車のディーラーであれば車検場などですね。そこを見せてもらわないと意味がないので、スタッフがどう動いているか見せてもらい、話を聞くという形で行いました。

アビ面白い取り組みですね。どういった始まりだったのでしょうか。

小笠原元々は「他社への短期インターンシップをやりたい」というお話だったのですが、ハードルが少し高いなと思い、色々な意味で優れた取り組みをしている会社へのベンチマーク訪問に変更しました。ただ、「行って良かったね」で済まさないよう振り返り、アクションプランに落とし込んで、現場での実践に繋げるようにしました。

(働いている方は)自分の職場しか知らないので、当たり前になってしまうんですね。改善も行き詰ってしまう。次の展開行けないよねというのが問題意識としてありました。

アビ訪問後は何か変化がありましたか。

小笠原雰囲気は変わりましたね。色んな企業で様々な取り組みをしているのを知らなかったので、それを知れたことは大きかったようです。私自身も参加者と一緒に勉強させてもらいました。

例えば、人事考課に「挨拶」を評価対象にしている企業もあり、そこまで人間関係やマナーを大切にしている会社があるということは、かなりインパクトがありますよね。

良い会社と言われている会社でも、挨拶といった基本的なことをして、しっかり良い会社を作り上げているんだと思いました。

主役は働いている一人一人

アビ企業の人材育成の担当者様で、良い方はどういった方でしょうか。

小笠原やはり、ゴールのイメージを持っているかどうかだとおもいます。「うちの会社にはどういう人がいて欲しい」と思っているかという、人事理念と言いますか、理想の人材像が描けていることです。

それから、ギャップをきちんと伝えられること。「本当はここを求めているが至らないのはなぜだと思いますか」と言ってもらえると、一緒に考えていけますよね。

あとは、研修で参加者から提案が出て、本当に実現してくれると、参加者は参加して良かったなと思えます。担当者であり、経営層の方が受け止めて実現してくれるというのは、皆さんにとって有難いし、会社にとっても良いことだと思います。

「研修は研修、実務は実務」と分けて考えられる方がいるのですが、それだと意味がないんですよね。研修を仕事の一環として埋め込んで、研修で話し合っていることはプロジェクトの会議の一つとして捉えて、意見を吸い上げ、風土改善に繋げていこうという担当者様だと、企業の雰囲気なども変わってきますね。

アビ確かに、自分の意見を受け止めて実現してもらえるというのは、とても大きいことですね。

では最後に、企業で人材育成を担当されている方にメッセージをいただけますか。

小笠原主役は働いている一人一人だと思っています。

その方々が、この会社で仕事をしていく中で、働きやすく、働き甲斐のある形で働くには、どういう環境を作ってあげないといけないか、学ぶ場としてどういう場が提供できるのか、また、そもそも人事制度に改善が必要か、職場環境を変えることが必要ではないか、と、様々な観点で考えていただけたらと思います。

一つのツールとして研修やコーチングがあるので、どういうアプローチが必要なのかを考えていただけたら、きっと良い職場、良い会社になっていくと思いますので、ぜひそういう想いを大事にしていただけたらと思います。

アビ本日はありがとうございました。

 

小笠原先生の研修にご興味をお持ちいただきましたら、是非営業担当者、もしくはお問い合わせフォームからご連絡を頂けたら幸いです。