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interviewインタビュー

小笠原 誓良 先生

2022.09.28

教科書改訂 特別インタビュー 小笠原誓良先生「色んな視点を吸収している教科書から自分が共感できるところを取捨選択して、自分の仕様書を作ってもらえたら」

小笠原誓良 できる若手社員の教科書

2022年10「できる若手社員の教科書」は第6版である改訂版を発行いたします。

改訂にあたり、教科書制作時にコミュニケーション・メンタルヘルスについてご協力いただいた小笠原誓良先生にお話を伺いました。

*小笠原誓良先生は、弊社でご登壇いただいている小笠原豊道先生のお嬢様で、小笠原豊道先生が経営される株式会社オフィスKojoで働かれています。

この記事のもくじ

ストレスがどう表れるかを、身近に伝わるように作成した動画とコラム

アビリティー以下アビ小笠原先生、本日はよろしくお願いいたします。

小笠原先生 以下敬称略よろしくお願いいたします。

アビまずはご経歴からお伺いできますか。

小笠原高知大学 医学部看護学科の出身で、看護師と保健師の資格取得の為、専門科目を履修し卒業しました。

その後、理学療法の専門学校に通っていたのですが、専門学校に入ったのは、当時父(株式会社オフィスKojo 代表取締役 小笠原豊道先生)が会社を興したところで、後に父の会社で働きたいと考えており、理学療法がスポーツやリハビリを絡めて会社の事業に活用できると思ったからでした。専門学校に入り半年した頃に体調不良で入院することになり、退院時に復学するか考えたのですが、父の会社で人材が必要になったため、父に入社したい意向を伝え今に至ります。

今は主に会社の事務を担っていますが、保健師の資格を活用して、メンタルヘルスの講義を請け負うこともあります。メンタルヘルスに関する内容や保健師の役割に関して、講義を通して普及することが現場で働く保健師のサポートになるのでは、という点でご支援に繋がると感じています。改めて資格を取っておいて良かったなと思っています。

アビ資格をお持ちなのはどんなところが良かったですか。

小笠原一つの業務として受けられる幅が広がるというのは、良かったと思います。メンタルヘルスに関して父とは語る視点が違うので、保健師としての根拠付けが出来るというのがあります。

アビ今回の教科書改訂において、コミュニケーションとメンタルヘルスについてご協力いただきましたが、教科書に含めたいと思った内容と、なぜそう思われたかを教えていただけますでしょうか。

小笠原まずメンタルヘルスについてですが、一般的に語られているストレスはどこか抽象的であると感じておりました。表面的な対策が語られているのではないかという疑念があったので、教える立場になったときに何をどう具体的にしていくのか考え、論文を読みながら整理していきました。

論文の語り口は、筆者の仮説によって道筋が作られ、研究の成果や根拠づけから深掘りされていくため、物事を具体化するうえで有力なツールと感じていましたね。

心は強さ・弱さと言う表現をされても、じゃあどう磨くのというのは掴みどころがないし、何か目に見えるところで語れないかと考え、スキルとして使えるストレスコーピングについてだったり、ストレスがどう見て取れるのかというところを、今回はアニメーションを使った動画と、コラムで伝えることにしました。

コラムは、読み物として教科書よりは身近に感じるもので、若い方が使われるSNSの雰囲気もイメージしつつ、何とか興味を持っていただけるように心掛けたのが、力を入れたところです。

アビアニメーションを使った動画とコラムは分かり易かったですね。

何かあった時に立ち返れるように、散りばめたキーワード

小笠原コミュニケーションについては、情報共有として捉えるのか、意思疎通として捉えるのかによっては、使うスキルが違うので、対談をしている様子を事例集にした方がイメージし易いかなと思いました。

メンタルヘルスは具体化することを心掛けたのですが、コミュニケーションは概念的と言いますか、抽象度をあえて出した感じにしました。

捉えきれないコミュニケーションは、観点や切り口で変わっていくので、ビジネスにおいてで切ってしまうとプライベートで問題が出てきてしまう可能性があるし、プライベートでの意思疎通のためだけの内容だと、実務でどうしたら良いのかとなるので、自分が社会に出てから思うことがあったことや、実際に耳にしたことのある悩みを取り上げ、一例に含めております。

アビ相談内容が、すごくリアルですよね。#(ハッシュタグ)が入っているのも面白いと思いました。

小笠原インスタグラムを意識して記載しました。

アビ今回、文章も全てご作成いただきましたが、作成いただく中で、心掛けたことや、「こういうことが伝われば良いな」と思われたことはありますか。

小笠原出来るだけ一つのことに囚われず、専門的な言葉を乱用しすぎないようにして、キーワードの意味合いで言葉を使うようにしました。

「これ何?」と興味を持てば自分で調べるし、興味なくさらっと読んだとしても、「どこかで見たことがある」と頭に少し残るので、それが引っかかって、何かあった時に立ち返れるようなもの、次に広げられるように、色んなキーワードを落としていきました

何かあった時に立ち返るのは、今の新入社員の方に意識して欲しいな、と思うことです。

一つ一つにキーワードをちりばめて、ただ関連から逸脱しないようにコラムの中には一つの筋があって、その中から好きな話を選んでもらえたらと思っています。

アビ自分で選べるようにしているんですね。確かに読み手に任せるというか、押し付ける感じがしないなと思いました。

小笠原どうしても教科書的になると「こうであるべき」と思考が持っていかれてしまうので、べき論に持っていかない表現の仕方はすごく考えました。

アビ先生ご自身は、今の若い方、と言われるような感覚はありますか。

小笠原どうでしょう、私は両極なところがありまして、あることに関してはものすごく「こうあるべき」と考えるところもあれば、「理由を教えてもらえないと動かない」というところもあり、感覚的なところと根拠が必要なところがあると思います。

「仕事だから」という言葉に抵抗があるので、「じゃあその仕事はどこまで含んでいるのか?」と思うところはありますね。

アビ「なぜしないといけないんですか?」というのは、若手社員の方に言われて困るときがあるというのを、研修で先輩社員の方から伺うことがありますね。

小笠原やはり行動を選択する権利、理由が増えてきていますもんね。

アビ良い変化ですよね。

メンタルヘルスを保つには、自分のサポーターを作ることが大切

アビ実際にご自身が、コミュニケーション・メンタルヘルスが大事だと思ったご経験はありますか。

小笠原コミュニケーションにおいて言うと、ビジネスマナーが土台になっていますが、社会人になるとコミュニケーションにおいても責任を伴うので、いかに配慮した言動が出来るかというのは苦労してきていると思います。
スキルの部分は変えていけるのですが、相手が変わると対応一つで受け止め方が変わるので、万人に良いと思われるコミュニケーションは無いんですよね。
かちかちしていると壁を作られていると思われてしまうこともあれば、TPOとしては合っていても関係性で全然違うということもありますよね。

関係性を探るというのはすごく大事で、TPOに囚われていると合わない場合もあるんだな、と思いました。場の雰囲気を探るのは難しいけれど、コミュニケーションを取る上で重要で、ラフな方が深く話せて、こっちが頼って欲しいときに頼ってもらえるし、聞いて欲しい時に聞いてもらえる関係性が出来る場合がある。「これが嫌なんだ」と気付くのがマナーだと思っています。

アビ確かに、丁寧すぎる話し方が好きでない方もいますし、丁寧であれば良いということではないですよね。

小笠原メンタルヘルスにおいては、「側に誰かいるか」に気付けているかが大事だと思っています。どれだけしんどい時だったとしても、気付いてくれている、気付かせてくれる誰かがいること、それは、人によって家族、友人、パートナー、お子さんだったりすると思います。

私の場合は、父が気付いてくれる、逆に父のことは私が気付けるように意識していて、ただ私の気付けないことを別の人は気付いていることもあり、その方から教えてもらって「ここは気をつけた方が良い」というように繋がっていくので、自分の周りにネットワークがあることは恵まれていることだなと思います。

アビ気付いてもらえることが大事なんですね。

小笠原今回教科書には、自分が出来ることとして使えるノウハウや知識をご提供出来ればと思っていたのですが、アニメーションの方には、「誰か気付く」ということをメッセージとして入れています。自分一人で何とかしようと思っても、自分の力量を超えるときには、誰かサポーターが必要であることや自らサポーターを作ることが大事であるという内容を組み込んでいます。ですので、教科書と動画を包括的に観ていただいて、伝わるといいなと思っています。

アビ確かに、大変な時って自分では気付けないことが多いですよね。

小笠原そうですね、ちょっとの変化を気付くのはだいたい周りの人なんですよね。

それが当たり前、自然にできることが大事かなと思います。会社では自分の業務に必死にならざるを得ないことが多いので、日頃の挨拶で違和感に気付いて、声を掛けてみるというような、ちょっとの声掛けが大事なのかなと思います。

それが嫌という人ももちろんいるので、難しいところですが、関係性を築くのは探り探りですね。今話したことが適さない人もいますからね。

アビ今のお話が適さない方もいる、ということにも目を向けていらっしゃるんですね。

小笠原価値観が多様化したからこそ、万人に受け入れられる対応をすることは難しいと感じています。ただ、相手にとっての最適を探るための意識を持ち、なるべく言動に気をつけています。

アビ自分が独りだと感じていて、気付いてくれる人がいないと感じる人は、どうしたら良いのでしょうか。

小笠原「相談してね」「何かあった?」という声掛けがされていたとしても人に頼ることに慣れていないために無理をしてしまうことや、話の内容によって話しづらい場合もあると思うので、話さずとも側にいる誰かがいて欲しいなと思います。

私はどちらかと言えばオープンなのですが、友人が相談をしてくれることがある時期までなくて、その時に気付いたのが私は自分のことを話す割合が多すぎたということなんです。(笑)

「傾聴が大事」と現場ではよく言われるのですが、自分が聞けてないことに気付くのに時間がかかってしまい、聞くことに意識が向いたときに、友人が段々と話してくれるようになったんですね。なので、まずは自分が「聞くよ」という姿勢を表していかないといけないなと思います。

アビ気付いて欲しいときは、まずは自分が気付くようにする姿勢を持った方が良いんですね。

「自分の仕様書」を作るために、共感できるところを取捨選択して欲しい

アビ今回の改訂版の教科書について、ご担当頂いたコミュニケーション・メンタルヘルス部分の活用法を教えていただけますでしょうか。

小笠原「こうあるべき」は絶対にあてはめないで欲しい、というのは常々伝えたいと思っていて、「自分の仕様書」を作るための参考程度に使って欲しいと思っています。

一冊で全てが完結するとは思っていなくて、「これはこうだ」と決めつけてしまうと、考えが凝り固まってしまいます。

コミュニケーションも人によって変わるもので、そういう性質があることを知るために使うのはありだと思うし、「こういうスキルがあるんだ」位に留めるのも一つかなと思いました。

色んな先生が携わって作られてきているものなので、ある先生が書いた一冊よりも、色んな視点を吸収している一冊の方が、「この先生のこういうところは共感できるな」と、取捨選択出来るのが、この教科書の良いところだと思います。

アビ教科書が正解でなく、取捨選択して良いんですね。

小笠原法律のように揺るがないものもありますが、そうでないものは、正解・不正解のベクトルで考えてしまうと、無理をさせちゃうかなと思うところはあります。

多様性を言われる現代だからこそ、選ぶことができるという自由度の高さと、活用するために自分の経験と紐づける一つのヒントとして使う、というのがこの教科書の活用の一つの視点かなと思います。

自分を枠に当てはめるのではなく、「変化」と捉えて自分が望む変化を受け入れてもらえたら

アビ最後に教科書を使われる新入社員・若手社員の方への応援メッセージをいただけますでしょうか。

小笠原変化する」というのは傾向というか、若手の時期だからこそ、変化が出来ると私は思っています。

同じ部署・同じ業務内容だとしても、人によって得られるものは違うし、適す・適さないという枠に当てはめようとすると苦しくなるので、「変化する」という表現の方が良いのかなと思います。自分が変化する場合もあるし、自分以外が変化する場合もあるので、その変化を受け入れたり、受け流したりということが、出来る時期だし必要な時期だと思います。

「挨拶をしても返してこない方がいたが、ずっと挨拶をし続けていたら、ある時返してくれた」という話を父から聞いた際には、変化には根気がいるものの自分が変化を望んだからこそ、起きたことだと思いました。

また、「チャンスは準備された心にのみ降り立つ」という言葉がありますが、準備ができているから変化は来るんですよね。自分が気付いていなくても準備がされていれば入ってくることもあるので、それを受け入れるかは自分の選択で、変化を怖がるなら踏み出さなくてもいいし、その変化に希望があるなら踏み出す。自分を責めずに糧に出来れば良いのかなと思います。

合わないと思ったら行動を起こせる柔軟さがある時期でもあるので思い切ることも一つと思います。変化はいつか落ち着くタイミングが来るとは思うのですが、それまでは変化し続けるのかなと思います。

アビ訪れることに、柔軟に変化したら良いんですね。
本日はどうも有難うございました。

 


 

今回お話をお伺いした小笠原誓良先生がご協力下さった「できる若手社員の教科書」の改訂版は下記より詳細をご覧いただけます。ご興味をお持ちいただけましたら、是非ご覧いただけたら幸いです。