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interview

小島先生に聞く~街の本屋が消え続ける本当の理由~

小島 俊一 先生

2026/2/12

前作『2028年 街から書店が消える日』に続き、最新作『街の本屋は誰に殺されているのか?』を出版した小島俊一講師。本屋の現状を入り口に、出版業界、さらには日本社会全体が抱える課題について聞きました。

聞き手|アビリティーセンター企業研修グループ 田中 恵子

なぜ今、2冊目としてこの本を書いたのか

-前作『街から書店が消える日』に続き、『街の本屋は誰に殺されているのか?』を出されました。今回、この本を書こうと思われた背景を教えてください。

小島:前の本は30人近くの方にインタビューして書いたのですが、振り返ると業界向けに寄りすぎていたと感じていました。そこで今回は、一般の方にもわかる言葉で伝えようと意識しました。私は長らく出版業界にいたので、どうしても業界の常識から自由になれない。そこで執筆にあたっては、業界外の方にも協力してもらい、「どこがわかりにくいのか」を確認しながら書きました。

-特にどんなところを、一般の方に知ってもらいたかったのでしょうか?

小島:本屋が苦しくなっているのは、現場の努力不足ではなく、業界特有の構造がそうさせているという点ですね。構造の問題だということを、多くの人に訴えたいと思っています。

「活字離れ」や「Amazon」では説明できない問題

-本屋の減少は、活字離れやAmazonの影響だと言われることも多いですが、その点についてはどうお考えですか。

小島:そこだけで話を終わらせると、思考停止になってしまいます。「活字離れだから仕方ない」「Amazonがあるから無理だよね」で終わってしまう。

2023年の経済産業省のレポートを見ると、日本、韓国、アメリカ、イギリス、ドイツ、フランスの6カ国を比べて、ここまで本屋が減っているのは日本だけなんです。他の国にも活字離れはあるし、Amazonもある。それでも減っていない。つまり、日本には固有の構造的な問題があるということなんです。

街の本屋を苦しめている“構造”とは何か

-その構造的な問題とは、具体的にどのようなものなのでしょうか。

小島:日本の出版業界では、再販売価格維持制度によって書店は価格を自由に決められず、さらに委託販売制度によって売れ残った本は返品できる仕組みになっている。その結果、書店はリスクを取りにくく、大きな利益を生み出しづらい構造に置かれているんです。

さらに、雑誌発売日協定という仕組みがあります。全国同じ日に発売するために、遅い地域に合わせる。その物流ルートに書籍も一緒に乗せているため、本が届くのが非常に遅くなる。注文して数日かかる、という状況は、今の感覚ではかなり不合理です。構造そのものが、限界に近づいていると感じています。

-それは、なかなか変えられないものなんでしょうか?

小島:見直しが起きてもいいと思うけれども、起きないですね。前作はそれを伝えたくて業界向けに書いたつもりなんだけれども伝わらなくて。

-厳しい状況が続く一方で、可能性も感じている部分はありますか。

小島:はい。全体としては厳しい状況が続いていますが、活字そのものが弱くなったとは思っていません。最近は独立系書店や、ZINEと呼ばれる自主制作の本が増えていて、そうした本を扱う書店やイベントには、若い人がたくさん集まっています。大きな流通の仕組みの中では苦しい一方で、「本が好き」「紙の本を大事にしたい」という人たちが、工夫しながら場をつくっている。そこに、希望の芽は確かにあると感じています。

出版業界だけではない──斜陽産業に共通するもの

-出版業界以外にも、新聞社やテレビ局など、かつては花形だった業界があります。共通点はあると感じられますか。

小島:あります。新聞、医療、タクシーなど、他の業界にも共通しているのは、伸びていた時代に機能していた規制が、今は自由度を奪っているという点です。もう一つは、研修や学びが止まっていること。凋落している業界ほど、人材育成に投資していません。研修がなければ、新しい発想は生まれにくい。「この業界をどうしたいのか」という問いを考える力が育たないのです。

本屋がある社会の価値

-最後に、読者やビジネスパーソンに向けてメッセージをお願いします。

小島:まずは、読書の価値を見直してほしいと思います。Amazonは便利ですが、過去の延長線にある本しか提示されません。新しい視点と出会うには、やはり本屋が有効です。買わなくてもいいので、新書コーナーを眺めてみてください。思いもよらないテーマと出会えるはずです。

本屋は「選書された知の場」であり、一覧できること自体に価値があります。本屋がなくなる日本社会は、やはりまずい。スマホを置いて、本屋に行く。それが、この本を通して伝えたかったことです。

小島先生の研修にご興味をお持ちいただきましたら、営業担当者、もしくはお問い合わせフォームからご連絡いただけたら幸いです。