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interview

三宅先生に聞く~著書「読むだけコーチング」にこめる思い~

三宅 俊輝 先生

2026/1/8

1on1の時間は取っているものの、何を話すのが正解なのか、結局なんの時間だったのかわからない―。そんな“手応えのなさ”を感じている管理職も多いのではないでしょうか。そうした現場の戸惑いに寄り添う一冊が、『読むだけコーチング』です。今回はその著者であり、のべ550社・1万5000名以上にコーチングプログラムを提供してきた三宅俊輝先生に、コーチングで大切なポイントを伺いました。

三宅 俊輝 先生 プロフィール:
株式会社エスコート 代表取締役。自動車整備士から「心の整備士」に転身。2017年に研修講師・プロコーチとして独立。企業向けコーチングプログラムを多数提供し、主体性あるリーダー育成を支援している。

聞き手|アビリティーセンター企業研修グループ 田中 恵子

なぜ今、「読むだけコーチング」を書いたのか

-「読むだけコーチング」、帯には「今日からはじめるコーチング入門」とありますが、なぜ今、入門書を書こうと思われたのか、きっかけを教えてください。

三宅:コーチングという言葉自体は広がってきているけれど、実際にはまだまだ普及しきれていないと感じることが多かったんです。実際企業に入らせていただくと、上司は部下との関わり方に悩み、部下側も上司との関係性や自分のキャリアに迷っているケースが少なくありません。そうした方々に向けて、本という形で届けることで、コーチングを当たり前の社会にできればと思ったのが、執筆の大きなきっかけでした。

-「コーチングを当たり前の社会に」という言葉が印象的ですが、コーチングが当たり前になるとどんな社会になると思われますか?

三宅:私はよく「ストレスフリーな社会になる」とお伝えしています。傾聴や承認、質問力といったスキルが身につくことで、自分の考えを伝えられるようになり、相手の話もきちんと聞けるようになる。そうした関わりが増えていくことで、人との関係性が良くなり、結果として働きやすい社会に近づいていくと思っています。

現場で起きているコーチングの誤解とつまずき

-三宅先生が「普及しきれていない」と感じる、コーチングに対する誤解やつまずきには、どのようなものがありますか。

三宅:誤解として一番多いのは、やはり「誘導されるんじゃないか」というものですね。コーチングと聞くと、「質問されて、思った方向に持っていかれるんじゃないか」と感じる方がまだ多いです。つまずきでいうと、上層部から、「コーチングをやりなさい」「1on1をやりなさい」と言われて、時間はとっているものの、何を話したらいいかわからず雑談で終わってしまう。「何のためにこの時間を使っているのか」がわからないまま続けている、という状態は非常に多いですね。

-そうしたつまずきを感じている方にこそ、この本を読んでほしいという思いがあるのでしょうか。

三宅:はい。そのために「知識ゼロからでも実践できる」ことを強く意識しました。コーチングは学ぼうとすると高額になりがちですし、独学で学んでいる方も多い。まずは基本を押さえ、現場で使えるようになるための“教科書”として書いたのがこの本です。今では企業研修のテキストとして活用いただくことも増えています。

コーチングで大切なのは「相手の可能性を信じること」

-多くの企業や管理職と関わる中で、三宅先生が「これは絶対に外せない」と感じているコーチングの考え方や姿勢は何でしょうか。

三宅:これまでお伝えしてきた定義としては、「コーチングは目標達成をサポートするためのコミュニケーションスキル」という言い方をしてきました。ただ、現場で大事にしている考え方を一言で表すとすると、「相手の可能性を信じて、引き出す関わり」 だと思っています。私自身、コーチングに出会って一番大きく変わったのは、「どんな人でも可能性の塊なんだ」と本気で信じられるようになったことです。人って、誰かに答えを教えられているうちは、その答えは“教えた人の答え”なんですよね。でも、問いを通して自分で考えて、自分で決めたことは、たとえ小さなことでも「自分の選択」になります。この「自分で決める」という経験を重ねていくと、責任感が生まれてくるんです。やらされ感ではなく、「自分で選んだことだからやろう」と思えるようになる。それが結果的に、主体性や行動力につながっていくと感じています。

-一方で、管理職の立場からすると、成果や評価の責任もある中で、部下の可能性を信じ続けるのが難しい場面もあるのではないかと思います。

三宅:まず前提として、上司が変わることが必要だと思っています。最近特に感じているのは、教育って、本来は“できたこと”に〇をつけることなんじゃないかということです。今は評価という言葉が広がっていて、できていないことに×をつける関わりが多くなりがちです。でも、本来の教育は、変化したこと、できるようになったことに〇をつけ続けること。その上で、指摘が必要なときは個別に、具体的に伝える。でも前提として、「この人の丸をどれだけ増やしていけるか」という視点を持って関わってほしいなと思っています。

GROWモデルを現場で活かすポイント

-本の中では、コーチングを実践する手法として、GROWモデルを紹介しています。これを現場で使いやすくするためのポイントを教えてください。

三宅:GROWモデルは、
G=Goal(目標)
R=Reality(現実)
O=Options(選択肢)
W=Will(意志・行動)
の頭文字を取ったもので、コーチングの基本的な対話の枠組みです。
現場でよくある誤解として、「必ずゴールから始めなきゃいけない」と思われがちなんですが、順番にこだわる必要はありません。大切なのは、その人が「未来志向なのか」「現在志向なのか」を見極めることです。たとえば、「将来はこうなりたい」「理想の働き方はこうです」と未来の話をどんどんしてくれる方であれば、Goal(目標)から入った方がスムーズです。一方で、「将来どうなりたいかって言われても、正直よくわからない」という方もいますよね。そういう場合は、「今、どんな状況ですか?」「今、何に困っていますか?」とReality(現実)から話を聞いていく方が、自然に対話が進みます。そこから、「じゃあ、どんな選択肢がありそうですか?」(Options)「まず何からやってみますか?」(Will)と整理していけばいい。その人に合わせて入口を変えることが、現場ではすごく大事ですね。

-1on1がうまく機能している企業には、どんな共通点がありますか。

三宅:一番大きいのは、「目的が明確かどうか」です。何のために1on1をやるのか。この時間をどういう場として位置づけているのか。そこが曖昧なままだと、うまくいきません。うまくいっている企業は、対話の時間を大切にしていて、対話の価値を言語化している。理念の中に入っている企業もありますね。

-対話を大切にするために、どんな支援があるといいと思われますか

三宅:管理職から「何を聞けばいいかわからない」「部下が話してくれない」という声が出たときは、まず「最初はうまくいかなくて当然ですよ」と伝えることがとても大事だと思います。その上で、管理職同士が悩みを共有できる場を作り、一緒に伴走していく。それが人事としての大切な支援だと感じています。

研修で起きる変化と、人事担当者へのメッセージ

-研修を受けた方に、最初に起きてほしい変化は何でしょうか。

三宅:私が一番いい変化だと思うのは、「部下を見る目が変わること」です。「全然できない」と思っていた社員さんが、「あれ、意外とできるようになってきたな」と見えるようになる。これまで指示待ちだった人が、「これ、やってみましょうか?」と提案してくるようになる。受講生の方は「なんかわからないけど、部下が積極的になってるんですよね」とおっしゃるんですが、それは上司の関わり方が変わったから起きたことなんです。

-最後に、人事担当者や管理職の方へメッセージをお願いします。

三宅:コーチングは、特別なスキルではなく、普段のコミュニケーションを見つめ直す機会だと思っています。少し踏み込むだけで、相手の話が聞けるようになり、自分の枠が広がり、視野が広がり、人間関係も良くなっていく。その小さな変化の積み重ねが、自分自身も、組織も、確実に働きやすい方向へ変えていきます。ぜひ一緒に学んでいけたら嬉しいです。

三宅先生の研修にご興味をお持ちいただきましたら、営業担当者、もしくはお問い合わせフォームからご連絡いただけたら幸いです。